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無の闇、光
目を閉じていた。
真っ暗だった。
どうせ目を開けても暗闇なんだから関係ない。
僕は直立不動で真っ暗闇の中に佇んでいた。
「ああ、ここが無か」
僕はそんなことをつぶやいた。僕は死んでいた。あのYB倉庫の片隅で、惨めに。
痛みはなかったけれど、あちこちから出血している。身体に触れてみた時、血のぬめりが手に残った。
死んだままの姿、僕はそこから変われない。ずっとずっと、永遠にこのままの姿なのか、……きっと、多分。
ぐるぐると闇の中で色々なことを考える。僕は間違っていたのか。
竜崎ならきっと答えをくれる。いや、彼は答えをくれていた。キラは間違っていると、ずっと。光り輝く世界を、色に満ちた世界を、彼は僕の目に映してくれた。それが全て。それだけで僕は良かったはずだった。退屈に満ちた世界が鮮やかになった。それだけで、僕は全てを得たも同然だったというのに。
彼が椅子から転げ落ちた瞬間がぐるぐると頭の中で巡っている。
あそこで咄嗟に抱きかかえたのは僕。その後醜い勝利宣言をしたのはキラ。
僕は……僕のままで、どうして生きられなかったのだろう。
最期の瞬間まで、いや今でも、僕は片時も忘れず竜崎のことを想っている。
「竜崎……竜崎……」
彼の事を考え続けていると目頭が熱くなってきて、僕はその場にしゃがみこんだ。
何を今更。僕にこんな真似をする権利などひとつもない。けれど堪らなかった。竜崎に会いたかった。あの瞬間から僕の時間は止まってしまっている。僕の時間、僕の心の時間……。
「竜崎……竜崎……」
名前を呼び続けていると、ふと眩しい光に包まれた。
目が眩んで何も見えない。人影があるようだった。ここで人に会うなんてあり得ない事だと思っていた。一体誰だ……?
……と訝っているうちに、強烈な衝撃が僕を襲い、僕は一、二メートル吹っ飛んだ。
「いった……なんだよもう!竜ざ…………え……?」
懐かしい痛みで咄嗟に口をついた。
「一回は一回です」
そこにはしてやったり、という顔の竜崎の姿があった。
見渡せば、いつの間にか彼と長いこと過ごした捜査本部の私室に佇んでいた。
「……竜崎……」
僕は吹っ飛んだ姿勢のまま彼の名を呼ぶ。
すると、ニッと口の端だけ持ち上げて笑い、
「散々言ったのに、貴方は……もう。仕方のない人です」
そんなことを宣った。
「仕方ないって……仕方ないだろ!新世界創造には必要……」
「――――だったですか?創れました?貴方の理想郷」
竜崎はペタペタと歩いて僕の前にしゃがみ込む。
僕は思わず俯いて、
「……お前が居なかった」
そう答えた。涙が出そうだった。
「でしょうね」
「……お前が、居なかったんだ……」
僕は堪らず涙をこぼした。ああ、ずっとこうやって泣きたかった。
「分かってますよ。後悔したでしょう?」
「――――……」
俯いたまま返事ができなかった。
「うんと言えないのは当たり前です。犠牲が多すぎました。……でも私だけは赦して差し上げます。……貴方を、愛しているから。殺されましたけど」
ふふ、と笑う口元には、いつもの竜崎の読みにくい表情、僕だけが分かる彼の憎たらしくも可愛らしい笑顔が浮かんでいた。
「もちろん、……本当は赦されない事です。……でも、今死んでいる私なら、もういいでしょう?」
鼻歌でも歌いそうな口調で僕にささやく。
「竜崎……」
「さあ、時間がもったいないです。いつものように、ね?月くん」
するりと竜崎の白く長い手が僕の首にまとわり付く。
くいと顎を傾けると、竜崎はひんやりした唇を僕のそれに重ねてきた。
ああ、この感触。長いこと触れていなかった、愛おしく狂おしい竜崎の唇。
僕は我慢できずにむしゃぶりついた。
闇の中に淡く浮き彫りになった寝室。
そこで僕は竜崎を抱く。
絶頂の白い光とともに、竜崎が発光する。
ああ、消えてしまうのか……消えてしまうのか……?
一瞬の夢、だったのだろうか。
どこにも行かないでくれ、竜崎。
掌にあった竜崎の体温がどんどん冷えていく。
ああ、もう離れねばならないのか。竜崎、竜崎……。
スパークした光の中、気がつけば大学構内に居た。
「夜神くん?どうしたんですか、ぼーっとして。いらないならそのセットのケーキ下さい」
「……あ、ああ。いいよ」
僕たちはカフェテリアに居た。
「さあ、今日は二人でテニスの約束でしたね、この前は負けてしまったので今度は勝ちますよ?楽しみです」
ふふ、と笑う流河の顔が可愛らしい。
この感触は、まだ流河に想いを伝えていない時の物だ。
心のなかでは流河を好きな気持が渦巻いている。
だぶだぶの白いTシャツから覗く白磁の肌が美しい。あそこに口付けて、花びらのように紅い跡を散らしたらどんなにか美しいだろう……。
さっきの情事の感覚がまだ身体に残っている。
僕は片手にしたコーヒーの味もそこそこに、ケーキを嬉しそうに頬張る流河の顔を見つめていた。
「……なんです?そんなに見られたら穴が開きます」
「馬鹿、そんなんじゃないよ……」
僕の語尾は掠れていた。上手く誤魔化せただろうか。
「ごちそうさまです。……さて、腹ごなしに一戦交えましょうか?……今度は本気で勝ちに行きますよ?」
またふふ、と笑う。その紅い唇にキスしたい。
「今度はって。前回は本気じゃなかったって口調だな。僕がまた勝って……そうだな、なんでも言うこと聞いてもらおうかな」
笑って返事すると、流河が
「なんです、その罰ゲームみたいのは。じゃあ私も、勝ったら夜神くんになんでも言うこと聞いてもらいます」
口をへの字にしてそう言った。
「いいよ。じゃあ勝ったほうが相手の言うことなんでも聞くってので」
「はい。勝負です」
その後コートを一面借りて(今度は無断ではない)今度はワンセットではなく1ゲームすることにした。結構な長丁場だ。
流河の髪に汗が光る。濡羽色の髪がキラキラ光を反射して、ああ、愛していると深く思う。美しい流河。あの身体と心を手に入れられればどんなにいいだろうか。
1ゲームで僕たちはヘトヘトになった。
試合の結果はほぼ互角。けれど僅差で僕が負けた。……悔しい。
「さて、罰ゲームは何?」
汗だくの身体を流そうと、僕らはシャワールームに移動する。
「そうですね、まだ考えてません」
「早く決めたら?」
「そうですね」
二人で隣同士の個室に入る。
個室と言っても簡単な木で仕切ってある場所に安物のカーテンだ。話なんかいくらだってできる。
……というか、覗こうと思えばいくらでも流河の身体が見られる。
僕は頭から湯を被って髪から水の滴る流河の首筋に釘付けになる。
僕は欲情していた。
「……夜神くん、石鹸忘れました」
「ああ、僕の使えば?」
板越しに石鹸をほいと渡す。
「私自分で身体を洗ったことがありません。面倒ですね……」
「なんだよその奇人ぶりは」
ははっと軽く笑い飛ばしたが本当のようだ。流河は石鹸を摘んでしかつめらしい顔をした。
「あ、そうですね、夜神くんには私の身体を念入りに洗っていただきましょう。それが罰ゲームです」
「はぁ?」
「いいでしょう?なんでも言うこと聞くんですよね?」
「そりゃそうだけど……」
流河の滑らかな肌を撫でまわしたとして、僕は下半身を宥める自信が無かった。これは相当な罰ゲームだ。
「ボディタオルとかないからな?素手だけどいいのか?」
「はい、私肌が弱いのでその方が助かります」
……なんてこった。
素手であの体を撫で回すというのか……。どこまで洗えっていうのだろう。流石にあそこまでは洗えなんて言わないだろう……。
僕は腹をくくって、シャンプーなんかが全部揃っている自分のブースに流河を招き入れた。
「さあ、夜神くん、お願いします」
僕は保険の為に腰にタオルを巻いた。流河は一糸まとわぬ姿だ。僕の喉はゴクリと鳴った。
まず無難に腕から洗う。そして肩、背中……。敏感そうな乳首を避けて、胸を撫で回す。それから足の先から……太腿にかけてゆっくりと……。
しかし滅多にないチャンスなのでは?と、ここで悪魔が囁いた。
僕はさも当たり前の様に流河の陰茎と陰嚢に手をかける。
「あ……そこは、自分で……」
「全身くまなく洗うんだろ?」
僕は思わず舌なめずりした。くびれを綺麗に擦り、竿を何度か扱くようにして洗う。
流河の唇からは、
「あっ、あっ……」
と短い喘ぎが漏れる。僕の興奮も最高潮に達し、タオルに見事なテントを張った。
ああ、どうしよう、我慢出来ない。
あの慎ましく窄まった場所に僕のこの怒張したものを根本まで収めて、激しく前後させたい。流河はきっと可愛らしく啼くだろう。
自分のものも、流河のものも、はしたなく上を向いていた。
流河の吐息がはっはっと短くなる。
「や、がみく……」
流河のたおやかな手が僕の腕に絡みつく。
「だ、したい、です……。ねえ……」
「ん、僕も……」
はあはあと艶かしい吐息が二人の間で充満する。
僕は自分のタオルを取り去って流河の腕を導いた。同時に流河のペニスにも自分の指を絡み付ける。
「さわりっこしよ?流河……」
「……ん……」
ひくひくと反応する流河の身体が可愛らしい。
このまま後ろの窄まりに突き込んだらどんなに気持ち良いだろうか。
まだ処女の流河の身体……初めてした時のあの食いちぎられそうな締め付けを思い出して、僕の隆起はますます猛った。
すり、すり、とぎこちなく流河の指先が僕のを愛撫する。堪らなかった。
流河のは、容赦なくきゅっきゅと扱いてやる。
「ふぁ……あ、あ……っ!夜神、くんっ」
「んっ……気持ちいい、流河……」
徐々に縮まる距離。僕たちは抱きあうようにして互いのペニスを一心不乱に扱いた。
先に流河が絶頂を迎える。
「あっ……!!ああっ!だ、め、やがみ、く……!あああ!!!」
びゅく、びゅく、と流河の先端から僕の腹に白濁が撒き散らされる。指の疎かになった流河の手を自分の手で覆い、僕のを擦った。
「あ、だめ、です。夜神くんの……大きっ……」
恥ずかしそうに頬を紅潮させる。その桃色の肌もあまりにも魅力的で。
僕もそんなに持たずに、竜崎の腹や胸に届くほどに勢い良く射精した。
流河がくったりと僕の身体に身を委ねてくる。
「……キス、したいです、夜神くん」
「ん、いいよ」
僕は可愛らしく震える流河の顎をついと持ち上げ、甘く柔らかく、羽のようなキスをする。
流河が頬を染めて僕の首に手をかける。
「……もっと……」
言われるままに、ちゅ、ちゅ、と流河の唇にキスを落とす。
舌をほんのりと出して誘われて、深く深くキスをした。
ああ、目眩がする。
「……夜神くん……私……」
「馬鹿、言うな」
「……なんでです?」
やや不機嫌そうに眉間を寄せた流河だったが、
「僕に先に言わせて?」
と微笑んだら顔を真赤にして頷いた。
「好きだよ……流河」
「夜神くん……私も……ずっと」
ああ、目眩がする。目眩がする……。
また光の渦がやってきた。
頼むから僕から流河を奪わないで。
気づいたら、世界は灰色をしていた。
ああ、見慣れた景色だ。
倦んだ灰色の世界。この世は腐っている。なんの面白味もない。
毎日毎日同じことの繰り返し。
勉強は簡単でつまらなかった。好きになれるレベルの子も一人も居なくて、自分に群がる女生徒を煩わしく思う毎日だ。
僕は高校の制服を着て、つまらない授業を外を眺めながら受けていた。
……ふ、と空から何か降ってくる。
なんだろう?黒い……ノート?
僕は放課後、未だあるだろうか、とその場所に行ってみた。
確かに黒いノートが落ちている。
「ふーん。落し物かな」
僕は手を伸ばす。
けれどここで脳内に警鐘が鳴り響いた。
だめだ!それは恐ろしく危険なもの。拾っては、触っては駄目だ!!!!!
なぜだかわからないけれど心臓がバクバクと脈打ち始める。
好奇心と恐怖感が拮抗する。
つまらない毎日。倦んだ灰色。すこしでも刺激になるならば……。
僕の腕は僕の警告を無視してノートに引き寄せられる。
駄目だ!駄目だ駄目だ!!!!それを拾っては、竜崎が、流河が、Lが死ぬ。
僕の大切な思い出……僕の全て。僕だけの鮮やかな記憶を……。
指先があと1センチでノートに触れる。
その時。
はし、と、手首を誰かに掴まれた。
「夜神、月くん……ですね?」
「え?あ、はい」
そこにはTシャツジーパンの怪しげな男が立っていた。
「そのノートは私の落し物です。見つけてくださってありがとうございます」
「あ、いえ……」
手首にジンジンと伝わる、何かわからない熱。
きゅうと痛む胸。
白い白い肌に目を奪われる。
「貴方と、お友達になりたいんです」
いきなり変な事を言う。
僕は訝りながらも、この男が本当の事を言っていると確信した。
「……貴方、名前は?」
「私ですか?私はLです」
「L?変わった名前」
彼は面白そうに目をぎょろぎょろさせると、
「貴方、退屈でしょう?私と一緒に来ませんか?」
「……え?」
新手の誘拐犯か?……とも思ったが、この男から邪気は感じられなかった。
僕は警戒しながら、
「うーんと、ひとまず少しだけなら」
こくん、と頷いてLの手を取る。
「これから貴方は、私と共に生きるんですよ」
Lは大層嬉しそうに僕にそう言った。僕はその言葉がじんわりと滲んで、なんだか幸せな気持ちになった。
世界は真っ暗だった。
何もない闇だった。
そこに一筋の光の道が現れた。
「ここを歩いて行くんだね?」
「そうです。その通りです」
「ふうん、なんだか悪くない」
Lはふふ、と微笑んで、僕の手を引く。
「月くん、これでずっと、永遠に一緒ですよ」
目を細めてLが言う。
「なんのこと?」
「いえ、なんでもありませんよ」
Lに手を引かれ、僕は暗闇の世界からLの居る光の世界へと導かれる。
そこが天国なんだか地獄なんだか、それ以外の物なのか、僕には解らない。
けれどこの人が一緒なら。
竜崎が、流河が、Lが一緒なら……。
どこに居ても、僕らは幸せに生きて行ける気がした。
――――ああ、世界が色づいていく。
end