流星群
竜崎とデートがしたい、という僕の願望はいつもあるもので。引きこもりがちな竜崎に、今日は何処かに行かないかと持ちかけた。
案の定竜崎は嫌そうな顔をする。けれど、世界の名探偵Lとこっそりお忍びで、っていうのも悪くないと思っている僕は引き下がらなかった。
「都内にさ、すっごい綺麗なプラネタリウムが出来たらしいんだよ。お前と一緒に星でも見られないかなって思って。最新鋭のだからきっと綺麗だよ」
「テーマパークとかじゃ無いだけマシですが……」
「前々から見てみたかったんだ。一緒に行ってくれない?」
竜崎は渋ったけれど、下手に出ると満更でもないらしく、仕方ないというのを装って、
「月くんがそんなに行きたいのなら……付き合って上げなくもないです」
そう言って椅子からぴょんと飛び降りた。
「今日、行くんです?」
「お前となら何時だって」
微笑んで返すと少し照れたような顔をした。
プラネタリウムには人が殆ど居なかった。出来てから少し時間が経っているから、昔ほどの混雑はないのだろう。まばらに座った人々の間、真っ暗闇になるドームの中で、僕はしっかりと竜崎と手を繋いだ。
「……誰かに見られたら……」
極小声で話しかけてきた竜崎に
「誰にも見られないよ」
と返事をする。
期待通り、プラネタリウムでは満天の星空が広がり、中々に僕は満足した。
「……物足りませんねえ」
竜崎がぶつくさ文句を言う。なんだよ、気分台無しだ。
「そんな事無かっただろ?」
「いっそ本物が見たい……そう思いませんか?」
竜崎の言葉にそりゃそうだけど、と相槌を打つ。
「行きませんか、星を見に」
今度は竜崎が僕の手を取る。外は寒いけれど、その分空気が澄んでいて美しい眺めを期待できた。
少し山間の拓けた所にワタリさんに連れて行ってもらう。外は極寒。少しだけ雪も積もっている。
これをお召に、と渡された防寒具は凄く性能が良くて、顔以外は寒さを余り感じないで済んだ。
「丁度今日は新月なんですよ」
「へえ、そうだったんだ」
さくさくと雪を踏んで真っ暗闇の中を進んでいく。ここならいいだろう、という所で、二人空を仰いだ。
降ってきそうなくらいの星空だ。プラネタリウムで覚えたばかりの星座が、キラキラと瞬いて見える。
「寝転がりませんか」
そう言うので、二人して雪原の中寝転んで空を眺めた。
真っ暗闇の中に作り物ではない星空が広がっている。煌めくその星々に、なんだか地球がひとりぼっちな気がした。だからまた竜崎の手を取った。
「今日は新月で……空に月くんは居ませんが……」
竜崎がぽつり、とこぼす。
「私の隣には、輝く月がありますね」
ふふ、と笑うその唇から、真っ白な吐息が漏れている。
空気に返すのがもったいなくて、冷える唇を重ね合った。あたたまるまで、じっくりと。
「……こういうデートなら、歓迎です」
頬が赤いのは、寒いからか、それとも?
「竜崎、好きだよ」
「私もです、月くん……」
ふふ、と笑って再び空を仰ぐ。一瞬視界の端にすっと通った一筋の光。流れ星だ。
「あ」
「流れ星、ですね」
「うん」
よく目を凝らすと、幾つもの流星が降ってきている。
「願い事、三回は無理だな」
「願い事?」
「流れ星が見える間に三回願い事を言うと叶うって、知らない?」
「知りませんでした」
それからずっと流れ星を二人探した。
三回唱えるのは無理だったけれど、沢山の星が降ってきている。隣には竜崎がいる。願い事をしたい僕がいる。
――――ずっとこのまま、二人で。
寂しいな、なんて思った気持ちは、いつの間にか暖かなものに変わっていた。
僕の隣には竜崎がいる。この星降る夜空の下で。僕の隣に輝くものがひとつあれば、僕はそれで幸せなのだから。
end