ミサにお任せ!
※無料配布本再録です。





「ミサさん、恋人にドキッとさせられる何かはありませんかね……」
私は捜査本部のソファに座って、横で月が耳栓で眠っているのを確かめた上で相談を持ちかけた。
海砂はこういうことに関しては頼りになる。私なんかは外に出た経験も殆ど無いので、恋愛経験豊富(だと思われる)海砂には色々相談に乗ってもらっていた。
よもや海砂の目の前に居る王子様、夜神月が私の恋人だなんて口が裂けても言えないが……。だってそれを言ってしまうと海砂は絶対に相談に乗ってはくれないし、確実に怒る。その上恋敵になってしまう。完全に相思相愛な私達のこと、海砂が何を言った所で覆るはずもないが、私は正直相談相手がいなくなるのが勿体なかった。

「なになに、恋人にドッキリ?!ミサそういうの大好き!」
海砂は案の定乗ってくれた。
「竜崎さんにも彼女居たんだぁー。へえー」
それは余計なお世話だ。多分世界一と思える恋人を手に入れた私に失礼なことだ。
「……はぁ、まぁ……」
若干頬を赤らめながら頭をぽりぽり掻くと、
「ねえねえどんな人?可愛い?綺麗?」
「綺麗な……人ですね」
「へええええ!竜崎さんの彼女ってことは頭いい?」
「はい、とても……日本一です」
「へええええ!ライトみたい!」
「…………」
海砂に根掘り葉掘り聞かれるとボロを出してしまいかねない。私は嘘つきだが、こういうことに関してはめっぽう弱く、顔色のコントロールなどが一切効かなくなるようだ。まだまだ修行が足りない。
「で、なんでドッキリなの?」
「……あのですね……最近……その……」
「うんうん」
「ちょっとマンネリといいますか……」
顔をますます赤らめて、私は立てた膝の間に半分顔を埋める。上目遣いで海砂をちらっと見ると、海砂はなんだか自信たっぷりに
「そういうことならミサにお任せ!!竜崎さんのマンネリ解消しちゃうよーん」
どんとペタンコの胸を叩いた。
「まずはね……そうだなぁ、下着かなにかプレゼントしちゃったら?」
「……なんでですか?」
「彼女がセクシーな格好してれば燃えるじゃない!」
えっへん、とでも言いたげな海砂がこういう時はちょっとかわいらしく、そして頼もしく見える。
私はさり気なくメモを取り出すと、セクシーな下着、と走り書きした。
なんでも一瞬で覚えられる自信はあるが、月の前で頭がパンクしてしまうこともある。恋愛事項に関してはメモを取っておくに限る。
「この場合……彼女がセクシーだといいんですか?」
「そうそう!」
「……どんな下着がいいんでしょう?」
恐る恐る聞いてみる。女性の下着について聞くなんて、また変態!と言われかねないと思ったからだ。
「そうだなぁ、Tバックとか、古いかもしれないけど定番だよ」
「Tバック……?」
「おしりのところがね、こう……紐みたいになってるの。エッチでしょー?」
うふふ、と海砂はにっこりした。
「頑張って!竜崎さん!」
「はぁ……頑張ります……」

……と、いうことで、尻が紐になっている下着を探した。
幸いこれというものを見つけたので、早速通販で取り寄せる。毎度一緒に入る風呂を敢えて交互に入って、穿き方をチェックして、よし、これでどうだ、と、ドキドキしながら月が出てくるのを待つ。
月は気に入ってくれるだろうか……。

「竜崎、バスタオル取って……」
「は、はい!」
「?!」
恐る恐る月の反応を見る。月は期待に反して目を白黒させていた。
「……その、なんだ。妙に気合入ってるね」
「え、あ、はい……」
顔を赤くしながら月の顔色を伺う。
「すっごい男らしいけど……僕は何も穿いてない方が……好きかな」
……ガーン。
「ど、どうしてですか?!」
思わず噛み付く私に、月は
「……だってそれ褌だろ?男らしすぎる」
「え……?褌は男らしすぎるんですか?」
大ショック。海砂に言われていた下着とはどうやら違ったらしい。また聞かねば……。
私はしゅんとして月の目の前で褌をするすると解く。
「……あのさ、竜崎」
「はい……」
「それ僕にやらせて?」
「……へ?」
「そうやって布するするっと解くのは……嫌いじゃない」
半脱げの褌に、月は反応した。そうなのか、紐を解くのは……興奮するのか……。私は心のメモにまたカリコリと書き足していく。後で清書しなくては。
――――その夜はちょっとだけ燃えた。
もうダメなくらい乱れたい私としては物足りなかったので、また海砂に相談することにした。


「……という訳で少し失敗してしまいました……」
「フンドシー?!それ女の子の下着じゃないよー!ドン引きだよ!」
「や、やはりそうでしたか……」
「もう!竜崎さんたら鈍いんだから!そんなの穿いてても竜崎さん燃えなかったでしょ?」
「……いえ、まぁその、ちょっとだけ楽しかったです」
「へえー、変わった彼女さん……」
海砂は面白そうに笑うと、あのねあのね、と言いながら携帯を取り出してぽちぽちとやる。画面をずいと突き出されて、ココみて!と指差された先にはショッピングサイトの画面となんとも艶かしい下着が写っていた。
「こういうの!こういうのがいいのよ!」
レースで出来た細い細い下着。確かに女性が身につけていたら可愛いだろう。
……けれど私ではあれやこれがはみ出してしまう……。ううん……。
「もうちょっと……露出の少ないものは無いんですか?」
またドキドキしながら私は聞いてみる。
「んー。横が紐になってるヤツは?」
「横が……紐?それはどういう……」
「だからね、ココのところが……ちょうちょ結びになっててね」
と、海砂は腰下あたりのサイドを指さした。
なるほど、それならば月が反応した解く行為も行える!私はそれだ!と意気込んだ。
「あの、色とか……どうなのでしょう?」
「うーん。清楚な子なら白とかで、レースが付いてて……でも小悪魔を演出したそうな子なら黒とかで、ちょっとテラテラした素材がいいんじゃない?セクシーだよ!」
「そ、そうですか……小悪魔なら黒……」
私はまたメモを取り出してかりかりと書き込む。
小悪魔、黒、紐のパンツ。と書いて満足した。
「ミサさんありがとうございます」
ぺこりとお礼をすると、海砂は満足そうに笑って、
「今度こそ、だよ!竜崎さん、結果報告してね!」
嬉しそうにミサって頼りになるぅ!と得意げにした。
「はい、頑張ります」

……という訳で今度こそ、と探したのだけれど、男性に入るサイズで該当する商品に行き当たらない。ビキニパンツ、というのは見つけたけれど、横が紐になっているものは見つけられなかった。
私はがっかりする。
しょんぼりしている私に、突然画面の向こうから
『竜崎、どうしました?』
とワタリの声が聞こえた。
私は恥ずかしかったけれど勇気を出してワタリに相談した。月に解いて貰えるような紐のパンツが欲しいのだと。
すると画面の向こうから、
『そういう事ならワタリにお任せを!』
と意気込んだ声が聞える。私はドキドキしたけれど、ワタリに相談してよかったと心から思った。
海砂のアドバイスにワタリの後押し。完璧だ。
斯くして私はかなりセクシーな、横が紐になっている下着を手に入れた。


また風呂に交互に入り、いそいそと下着を身につける。小悪魔の黒だ。
横は可愛らしくちょうちょ結びになっているけどポロリは無い。完璧だった。
月が風呂から出てくる。
「竜崎ー、バスタオル取って……」
「は、はい!」
意気込んで下着姿を披露すると、月の目が今度は好感触なギラついた感じになっていた。
「……それ、どうしたの?」
「わ、ワタリに作ってもらいました……」
正直にそういうと、
「なんで?」
と月がツッコミを入れる。私はわたわたしながら、
「月くんがびっくりしてくれて……あの……夜燃えてくれるといいな……と」
「……満足してなかった?」
「いえ!そんな訳では……!」
「じゃあなんで……?」
「……あの、喜んで貰いたくて……」
そう言うと、月は凄く嬉しそうに笑って、私をベッドに引っ立てて行った。

「ねえ、竜崎、その横の紐、口で解かせて……?」
そういう月は完全に欲情しているようで。
私は海砂とワタリに感謝しながら、その晩はもうこれ以上ないくらいの激しいセックスをした。


ああ、やはり海砂は頼りになる。
今度なにかお礼をしなくては……と思いつつ、私は月の腕に溺れていった。

海砂に、ワタリにお任せ!だ。
私は次も是非相談しようと、固く決意をしたのであった。





end