こたつみかん
※冬コミ配布ペーパーです。
寒さ厳しい冬のこと、竜崎が寒い寒いと言って仕方ないので気まぐれに私室にこたつを用意してもらうことにした。
こたつの経験がなかったのか、竜崎はいたく感激して暖かい暖かいと本部でふれ回ったが、みなそんなの当然だと相手にしなかったので竜崎は少しふてくされた。
そんな竜崎が可愛かったので、僕はみかんを買って籠に盛りつけた。
「なんです?」
「竜崎、こたつと言えば日本人にはみかんなんだよ」
まぁ絶対じゃないけどそういうイメージってあるからいいかと適当なことを言った。
みかんを赤いネットから取り出しておいたら、竜崎がそれを目敏く見つけた。
「へんなネットですね」
「ああ、これはね……」
僕がネットをくるくる丸めてリンゴの形を作って
「子供の頃よくこうやって遊んだな」
そう言ったら
「そうなんですか」
と竜崎がもう一個あったネットでくるくると丸めて見せた。小さく巻いてしまったので、リンゴと言うより柿みたいになってしまって、また竜崎は若干むくれた。
「なんで月くんのはリンゴに見えるのに私のは柿みたいなんですか……」
「小さく巻きすぎたんだろ?」
「月くんばっかりずるいです」
あまり機嫌を損ねられてもせっかくのこたつが台無しになると思って、僕は竜崎がリンゴを作れるようになるまで根気よく待った。
綺麗に出来たネットのリンゴをみて、竜崎は満足したらしい。
「みかん剥いてください、月くん」
なんて言ってきた。
竜崎のご機嫌も取れた事だし、と、僕はついでにと鍋セットを用意してもらった。
卓上コンロに土鍋。皿はわざとちょっと安っぽいのにして、日本の家庭を演じてみようかと思ったわけだ。
「鍋ですか?初めてです。ミルク鍋がいいです。お砂糖いっぱい入れて……」
「それじゃ日本式の鍋にならないの!ミルク粥じゃないんだから……」
「ミルクがいいです」
「もう、仕方ないなあ」
僕は百歩譲って豆乳鍋にする事にした。もちろん甘くないが湯葉が楽しめる鍋だ。
竜崎が僕に倣って表面にできたばかりの湯葉をすくって食べる。
「甘くないですけど……おもしろいです」
「うん。おもしろいね」
中に投入した野菜やつみれなんかには目もくれず、ひたすら湯葉をすくっていた。
「……日本の冬もなかなか暖かいです」
満足げに笑う竜崎に食後のみかんを剥いてやりながら、僕はああ、本当に竜崎って可愛いなぁなんて思った年末だった。
次は年越しそばとおせちだな……とか思いながら。
きっとそのときも苦戦するのだろう。
栗きんとんを大量に作る羽目になるのを予想して、もう頭が痛くなる僕だったりする。
ともかく、冬の日本と竜崎もなかなかいいって事で。
end