冬のデート



日本には暖かい冬と寒い冬がある。
今年はその寒い方らしくて。
私は外に出てぶるりと震えた。
なんてったっていつもの格好である。寒くて当然だ。
今日は月と待ち合わせ。
月は時間に厳しい。10分前にはやってくる。
けれど私は待ち遠しくて20分前にやってきてしまった。
月が来るまであと10分、どうしたものか、
と、近くのベンチに腰掛けるも、ベンチすら冷たくて尻が冷える。
私の身体はますます凍えた。
「竜崎ーっ、竜崎!」
まだ座って3分も経たない。
驚いて座ったばかりのベンチから腰を上げた。
「月くん」
「竜崎、おまたせ」
「……待ってません」
「何言ってるのさ、こんなに冷えて……」
と、私の手を握ってくる。
公共の場で恥ずかしかったが、私は手を引っ込めることはしなかった。
「竜崎がね、寒い格好して出てくるって解ってたから」
そう言って紙袋からきちんとした作りの紺のダッフルコートと、白いもこもこのマフラー。
ふわふわの白い耳あてと、これまた白い手袋を出してきた。
「月くん……私のですか?」
「そうだよ、僕からのプレゼント」
そう言うと、私にコートを着せ、首にくるくると柔らかい素材のマフラーを巻き、
手袋と耳あてを付けてくれた。
「あったかいです……」
私はなんとなく恥ずかしくなって下を向く。月の心遣いが嬉しかった。
しかもコートは誂えたようにぴったりだ。
「ん、似合ってる」
にこにことする月に、
「いつサイズを測ったんです?ぴったりです」
「……そりゃまぁ……ね、色々してると解るものだよ」
「色々?」
「そう、夜色々」
夜の色々といえばひとつしか思いつかない。
私の頬はかあと赤くなった。恥ずかし紛れに
「右手が空いてないと……爪が噛めません」
「噛まないほうがいいと思うけど」
「噛みたいです」
「……仕方ないなぁ」
そんな会話をしてみる。
右手から月がそっと手袋を外して、私のコートの右ポケットに入れる。
「あんまりガリガリすると爪無くなっちゃうから……」
そう続けて、ぴっと綺麗な前歯で左手の革手袋を脱ぐ。
「こうして……ね?」
私の右手を手に取った。
「僕の手が捕まえておけば、寒くないし、どうしても噛みたくなったら噛めるし」
「……はい」
私の頬はますます熱くなる。
コートなんて要らないんじゃないかと思うくらいには身体が熱くなった。
繋いだ手を、月は自分のコートのポケットに入れてしまう。
私はドキドキして月の手をぎゅっと握る。
月は満足そうににっこりする。
「じゃあ何処に行こうか?」
「そうですね……」
「希望ある?」
覗きこんでくる月の顔が眩しい。
私はぼんやり見惚れながら、火照った頬をなだめるべく、
「うんと寒いところがいいです」
そんな馬鹿げたことを宣った。




end