L七部作
紙束に埋もれ、データの波に飲まれ、キーボードを叩きまくる。
マイクで指示を出し、人を使い頭脳を使って私は戦う。
最後には必ず勝利が待っている。
こうして私は仕事に溺れる。
休憩の短い最中、芳醇な香りとほろ苦い酸味、大量にぶち込んだ角砂糖。
琥珀色の飲み物で一息をつく。
それは覚醒をもたらす化学物質で満たされていて。
こうして私はカフェインに溺れる。
眠れない夜、枕元には橙色の柔らかな照明。
限りなく薄く伸ばされたガラスの中の清浄な水。
2錠も飲めば安らかに眠れる。
こうして私はベンゾジアゼピンに溺れる。
脳を使う。消費される。自覚できる。
掴んでは放り込む色とりどりの中の菓子の中に。
甘く蕩ける私のエネルギー。
こうして私は砂糖に溺れる。
指を絡める。肌を重ねて飛び散る汗の水滴。
伸びやかに声を上げて、跳ね上がる腰のリズムに。
開放の瞬間の快楽に。
こうして私はセックスに溺れる。
栗色の髪、紅茶色の虹彩。美しく揃った目鼻立ち。
高性能な脳と体は誰よりも際立っていて。
私を見つめるその焦げる視線に。
こうして私は月に溺れる。
L。L。私の仮の名前。ほんとうの名前。
すべてがこの一文字に集約される。
悲しいまでのシンプルなアルファベット。
それが私。
こうして私は「L」に溺れる。
L七部作
end